演奏曲のご紹介
2024年7月21日(日)に岡山シンフォニーホールにて開催する「岡山大学男声合唱団コール・ロータス創立60周年記念演奏会」~武内成禮追悼コンサート~の演奏曲についてご紹介します。
この度の演奏会の曲目は、下記のとおりです。
- 男声合唱とピアノのための「五つのモノローグ」(創立 50 周年記念委嘱作品)
- 「ロータス愛唱曲集アラカルト」 ※現役単独ステージ
- 「多田武彦男声合唱曲集」より
男声合唱とピアノのための「五つのモノローグ」
男声合唱とピアノのための「五つのモノローグ」は、谷川俊太郎作詩、信長貴富作曲の作品です。 岡山大学男声合唱団コール・ロータスの創立50周年を記念して委嘱され2010年に作曲され、同年7月3日に岡山大学男声合唱団コール・ロータスOB会 創立50周年記念演奏会において、OB・現役合同ステージで初演されました。
作曲者が、幅広い世代によって歌われること、男声合唱であることの必然、男の声でしか表現できない内容を求めた結果、谷川俊太郎の比較的初期の詩集「あなたに」と「うつむく青年」より男の気持ちを綴った5つの詩が選択されています。
- 男の地図
- 女に
- 男の唄
- 父の唄
- 頼み
男の地図
難解な詩であり、難解な曲です。曲の中で多くの話し言葉が表現され、まさに「カオスのようにどろどろ」しています。大胆な曲です。
女に
妻を思う男の気持ちが謳われています。その妻を通して子どもたちの、そして孫たちの幸せを願う男の気持ちに同じ想いを感じます。また、曲調は自由さと意外性が展開され気持ちが入る曲です。
男の唄
ブルーススタイルの曲です。男のニヒルさ、ずるさ、孤独など男の内面を歌います。「男の心の底の底、それは女にゃ分からない」のですが、「それは男も分からない」のです。
父の唄
「遠く行け息子よ」で始まり、広い世界に旅立つ息子を見守る父の気持ちが表現されています。母親の気持ちとは違うという話も聞きますが、父は息子にそうした思いを持っています。「愛せるだけの女を愛せ だが命かけて愛するのは ただひとりだけ おれがきみのおふくろを愛したように」はただただ感動します。バリトンソロで始まるとっつきやすく歌謡曲として出しても人気が出そうな曲です。
頼み
「五つのモノローグ」は、5曲合わせて全50ページの楽譜ですが、この曲だけでなんと22ページを占めています。テンポが早く掛け合いが続く曲です。詩も難解ですが、「裏返せ 俺を裏返せ」は、きっとお客様の耳に残ることでしょう。エンディングに向けてひたすら突っ走ります。歌いながら燃える曲です。息切れしないように頑張ります。
「ロータス愛唱曲集アラカルト」 ※現役単独ステージ
いざ起て戦人よ
作詩 藤井泰一郎、作曲 マクグラナハン。男声合唱を歌ったことがあるものは、必ず歌ったことがある曲です。全員が必ず知っている曲だから、合同演奏会の打ち上げで歌うことも多い曲です。威勢の良い歌で男声合唱の醍醐味を感じる曲です。
The Battle of Jericho
旧約聖書に登場する古代イスラエルのヨシュアによる都市ジェリコの攻略を歌った曲です。黒人霊歌の中でもポピュラーな曲で、記憶に残る名曲です。
Sailing, Sailing
出港しようとするとき水夫が力を合わせるために歌った曲です。Sea Shantyの中でも特に有名な1曲です。現在はともかく、水夫の歌=男の歌でした。男声合唱曲の中でもしびれる1曲です。日本においても水夫の歌は、ソーラン節など数多くあります。
酒頌(しゅしょう)
近年、男声合唱の定番となっている曲です。お酒をテーマにした曲は、合唱はもちろん民謡や歌謡曲に数多く見られます。古今東西、人々は様々なシーンでお酒と付き合ってきました。これからも続いていくことでしょう。
雨(男声合唱組曲「雨」から)
作詩 八木重吉、作曲 多田武彦。悩みや苦しみから昇華しきった主人公は、溢れ出ようとする涙をおさえてしみじみ歌い終えます。詩も曲も素晴らしい名曲です。
「多田武彦男声合唱曲集」より
男声合唱を歌った男なら誰もが歌ったことがある、そして男声合唱経験者が愛してやまない多田武彦男声合唱曲集からアラカルトで演奏します。
- 柳川(柳河風俗詩)
- 鐘鳴りぬ(わがふるき日のうた)
- ふり売り(中勘助の詩から)
- 石家荘にて(草野心平の詩から)
- 雪中越冬(雪国にて)
- 作品第肆(富士山)
- 作品第弐拾壱(富士山)
柳川(柳河風俗詩)
北原白秋作詩。多田武彦による最初の作品です。1985年度NHK全国学校音楽コンクール高等学校の部の課題曲です。白秋のふるさと福岡県柳川市の光景を詠んだ曲です。
鐘鳴りぬ(わがふるき日のうた)
三好達治作詩。鐘が鳴りひびく街から戦場に向かう若者の気持ちを歌った曲です。別れの歌ですが、熱い想いを抱かずにはいられない名曲です。三好達治の詩はいいですね。感情が高ぶります。
ふり売り(中勘助の詩から)
中勘助作詩。街を行く魚売りの光景を歌っています。遠くから聞こえる魚売りの声をソロが演じます。今の街では聞くことがない魚売りの声ですが、かつては、こうした声が聞こえる生活が日常の姿だったのでしょう。
石家荘にて(草野心平の詩から)
草野心平作詩。日中戦争のさなかに石家荘を訪れていた草野心平の詩です。石家荘は北京の南西約300kmほどに位置する河北省の省都の名前です。地図で見ると北京に近いところと感じる位置にありますが、決してアパートの名前などではありません。「茫茫の平野くだりて サガレンの潮香かぎし女 月蛾の街にはいり来たれり」で始まるこの曲はなんとも言えない悲しみを感じる名曲です。
サガレン:「樺太、サハリン」のことです。
月蛾(げつが):「娼婦」のことです。
雪中越冬(雪国にて)
堀口大學作詩による男声合唱組曲「雪国にて」の終曲です。「越後の冬は長いから 半としつづく冬だから 高田の雪は深いから 人の情けと似ないから」この短い詩の中に越後の冬の過酷さと人々の暖かさが感じられる名曲です。
作品第肆(富士山)
草野心平作詩による男声合唱組曲「富士山」の2曲目です。春の光が溢れ、鳥が鳴き、草花が萠え、少女たちが遊んでいる。春ののどかな光景の中にその後ろにそびえる富士山の圧倒的な存在を感じさせる曲です。
作品第弐拾壱(富士山)
草野心平作詩による男声合唱組曲「富士山」の終曲です。原題「宇宙線富士」。圧倒的な存在である富士山を歌い切ります。「夕映えの富士」は、圧倒的な存在のままフィナーレへといざないます。
アンコール
最後の曲は皆様御存知の「コール・ロータスの歌」です。
定期演奏会のアンコールとしてこの曲を演奏するようになったのは、第18回定期演奏会(1979.1.20)からです。アンコールの定番になってからすでに40年以上が経過しました。もちろん、創立60周年記念演奏会の最後を飾るアンコール曲もこの歌でなければ演奏会は終わりません。
「コール・ロータスの歌」は、定期演奏会のアンコールでしか聴くことができないため、”幻の曲”とも言われ、定期演奏会に足を運んでいただいたお客様の耳に最後に刻んで帰っていただく曲となっています。
「コール・ロータスの歌」の誕生秘話は下記ページをご覧ください。