ロータス物語 第3回「ロータスの歌」

ロータス物語

2025.9.8修正
2024.5.3修正
2024.4.7公開

(前回のあらすじ)コンクールで敗れ去り挫折したロータスは、石丸寛先生を第7回定期演奏会(1968.2.3)の客演指揮者に迎えて新たな一歩を踏み出した。

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初の委嘱作品

1967年(第7期)に新たな一歩を踏み出したロータスであるが、やはり次の年(1968年、第8期)になってもフラウェンコールの壁が立ちはだかり、岡山県合唱コンクールでも中国合唱コンクールでもロータスは2位となり、全国大会への道は絶たれた。さて、どーする?

「第8回定期演奏会も客演指揮者を呼びましょう!できれば初演発表できる曲をお願いしましょう!」ということでまとまり、チーフマネジャー大下俊則が東京に出向き、再び石丸寛先生に指揮を依頼することに成功した。

さらに、同時に日本の中世期ヨーロッパ音楽研究の最高権威者である東京芸術大学講師 皆川達夫先生を客演指揮者として口説き落とした。

定期演奏会のパンフレットに寄せられた皆川達夫先生の直筆原稿

多忙を極める石丸先生にステージはもちろん委嘱作品を書いてもらうことは至難を極めた。

東京交響楽団 東京都交響楽団の専任指揮者。合唱では早稲田大学グリークラブ、慶応義塾大学ワグネルソサイエティ男声合唱団にテレビのレギュラー週2本、ネスカフェゴールドブレンドのコマーシャル(YouTube)、お笑い番組のクラッシック関係のギャグなら必ずといってよいほど引っ張られるほどの賑わい。(植木等に指揮法を教える場面もあった!)だから、コール・ロータスのプライオリティーは上位に位置してはいない。そこをプッシュしておまけに依嘱作品までこぎ着けるのは至難の技だった。

しかし、「今、書いている曲があるから それを岡山で初演としようよ」という話をいただいたまではよかったが、作詩家から石丸先生になかなか詩が届かず作曲が全然進まないという。数カ月先に定演を控えるロータスメンにとって、かなり厳しい状態だった。

このロータス史上初めての委嘱作品になる男声合唱組曲「青春」は、8声に分かれ、不協和音が連続するという難しい曲だった。しかし、この曲は、委嘱作品と名付けられているにもかかわらず石丸先生がお持ちしたということで、委嘱料は1円も払ってない。

第8回定期演奏会(1969.2.1) 第3ステージ 男声合唱組曲「青春」 客演指揮石丸寛 岡山市民会館

「コール・ロータスの歌」誕生

1968年11月、今期2回目の来岡時の練習場で、石丸先生が運命の扉を突然開いた。

「クラブソング作ろうよ! いるだろう?どう? 詩は君たちで用意しなさい。」

役員達に異存があるわけはなく、大月洋部長(元顧問)が「よろしくお願いします」とオファーをありがたく頂戴し、「コール・ロータスの歌」誕生に向けプロジェクトが動き出した。秋にしては少々冷え込む夕方、南方幼稚園(当時の練習場所)での出来事だった。

今にして思えば、石丸先生からクラブソングをオファーした背景には、男声合唱組曲「青春」の仕上がりが彼なりに不満足だったからだと思う。償いの意味があったのかもしれない。

しかし、ロータスメンの中に詩人がいる訳もなく、団員の知人に依頼していくつかの詩を書いてもらった。

「学生生活は決してバラ色ではないけれど・・・だけど、僕にはロータスがある!

帰ったらインスタントラーメンを食って・・・だけど、僕にはロータスがある!

講義で代返して・・・だけど、僕にはロータスがある!」

という風な少々レトロっぽいネガティブなものだった。

「・・・、 こんなのじゃダメだよ・・・ 分かった、誰かに頼んでみるよ。」

それから1ヶ月程して詩が付いた楽譜が届いた。かくしてロータスメンは、現在も歌い継がれている「コール・ロータスの歌」を手にしたのだった。

それから2ヶ月後、第8回定期演奏会の第3ステージの男声合唱組曲「青春」の初演の演奏後に石丸先生自らのアナウンスの後で、「コール・ロータスの歌」が初演された。

この第8回定期演奏会は、岡山の音楽関係者が眼を見張った。

異例の高名な2人の客演指揮者のステージと男声合唱組曲の初演。

そして、今も団員が誇りを持って歌い続けているクラブソング「コール・ロータスの歌」を同時に発表したのだった。

第8回定期演奏会(1969.2.1) 客演指揮石丸寛、皆川達夫 岡山市民会館

※1968年 東大闘争始まる、メキシコオリンピック

「コール・ロータスの歌」その後

このロータスの歌は、第8回定期演奏会の石丸寛先生のステージアンコールで初演された後は、第9回定期演奏会、第10回記念定期演奏会には、クラブソングとして演奏会のオープニング曲(いわゆるエール)として演奏されている。その後、第11回定期演奏会でエールは、Die Whacht am Rheinに戻ってから現在も変わりなく続いている。その後「コール・ロータスの歌」は、ロータスメンのみが知るだけで演奏会で歌われることはなかった。

定期演奏会のアンコールとしてこの曲を演奏することになるのは、第18回定期演奏会(1979.1.20)からになる。第18期指揮者の荒木洋行が、こんなにかっこいい曲をなぜ演奏しないのか、他の合唱団のように定期演奏会のエンディングテーマとしてこれ以上の曲はないと考え、今に続く定期演奏会を閉じるアンコール曲として演奏された。

こうして、「コール・ロータスの歌」が定期演奏会のアンコール曲として定番になってから50年になろうとしている。「コール・ロータスの歌」は、定期演奏会のアンコールでしか聴くことができないため、”幻の曲”とも言われ、定期演奏会に足を運んでいただいたお客様に最後に耳に刻んで帰っていただく曲である。

なお、この「コール・ロータスの歌」でさえ石丸先生がロータスに持ち込んだ(プレゼントされた?)曲だから委嘱料を支払っていない。

 

この「コール・ロータスの歌」は、3番構成で、それぞれ次の歌詩から始まる。

1番「櫓(ろ)の音かるく漕ぎのぼる」

2番「ただひたむきに灯を」

3番「すべての星座かがきが」

1番から3番までの最初の頭文字をつなげると「ろたす」→「ロータス」になる。これは、「コール・ロータスの歌」の秘密の一つであるが、このコンセプトは作曲時からあったものだ。

作詩の中山知子先生は、童謡詩人であり翻訳家であり、NHK「みんなのうた」で放送されているた童謡の作詞も手掛け、「若草物語」「ふしぎの国のアリス」など児童文学の翻訳も多数務められた方である。

 

「コール・ロータスの歌」は、ロータスメンが誇りを持って歌う最高の曲であるが、第8回定期演奏会で誕生したため、創世記のメンバーの思い入れは浅かった。「定期演奏会の最後にクラブソングで終えるのはおかしいのではないか」というOBの意見もあったが、ロータスメンはこれまで50年近くにわたり延々と定期演奏会の最後の曲として「コール・ロータスの歌」を歌い継いでいる。

2010年7月3日にOB会主催で創立50周年記念演奏会が開催され、アンコールで創世記メンバー以外が推す「コール・ロータスの歌」を演奏したが、このときはアンコールの最後の曲ではなかった。お客様からロータスの歌がなぜ最後でないのかというご意見も頂戴した。しかし、「コール・ロータスの歌」をOB演奏会のアンコールで歌ったことはロータスにとって歴史的快挙だったのだ。その14年後、2024年7月21日に開催された創立60周年記念演奏会では、現役の定期演奏会と同様に「コール・ロータスの歌」を高らかに歌い演奏会を締めたのだった。

2010.7.3 創立50周年記念演奏会 アンコール「コール・ロータスの歌」 岡山シンフォニーホール 指揮 上月明

コール・ロータスの歌

中山知子 作詩
石丸 寛 作曲

1.の音かるく 漕ぎのぼる
川辺の夜明け 咲く花の
深紅の夢を むさぼれば
ゆくてに冴える 空の青
古代の楽師 さながらに
うたえ われら コール・ロータス

2.だひたむきに 灯を
かかげて集う この自由
大地の歌と 潮騒と
狩人の歌 愛の歌
愛こそいのち たからかに
うたえ われら コール・ロータス

3.べての星座 かがやきが
ひとたびゆらぐ その夜も
嵐の底の ざわめきを
つらぬき響く ハーモニイ
世紀を肩に 振りわけて
うたえ われら コール・ロータス

 

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