ロータス物語 第4回「嵐」

ロータス物語

(前回のあらすじ)再び石丸寛先生と皆川達夫先生を第8回定期演奏会(1969.2.1)の客演指揮者に迎えて、委嘱作品の初演を行うことになった。もがき苦しむ中で誕生したのが「コール・ロータスの歌」だった。

ロータス物語 第3回「ロータスの歌」
(前回のあらすじ)挫折したロータスは、石丸寛先生を第7回定期演奏会(1968.2.3)の客演指揮者に迎えて新たな一歩を踏み出した。 初の委嘱作品 1967年(第7期)に新たな一歩を踏み出したロータスであるが、やはり次の年(1968年、第8期...

大学紛争

ロータスが挫折から立ち直ろうとしていた1968年(8期)から始まった東大紛争は、全国の大学に拡大していった。当然、ロータスもその波から逃れることはできず、さらなる試練が待ち受けることになる。

全国を席巻した大学紛争の波は、ロータスにも襲いかかった。岡大でもっとも激しかったのは、1968年から69年にかけてであり、1969年2月1日に第8回定期演奏会を終えた後は、とうとう学園封鎖で授業が行われなくなった。1969年春、のちに第11期部長に就任する井内が入学したが、この年は入学式も開催されず、9月まで授業が始まらないというとんでもない1年だった。

大学が完全に封鎖される前に幸いにもクラブ活動のプレゼンテーションが行われていたので、井内は迷わずロータスのブースで入部手続きをした。高校3年生の合唱フェスティバルのときステージ一杯に広がって歌うロータスの男声合唱に圧倒されたからだ。騙されて入部させられる部員が多い中、めずらしい部員だった。

しかし、大学紛争によって多くのクラブは壊滅的危機を迎えていたが、そうした中でロータスが壊滅を逃れたのは、人がどうであろうと自分は自分という、良く言えば他人に左右されない人間、悪く言えば自分勝手な人間がロータスに多かったからだろう。いわゆる当時ノンポリと言われていた学生である。ロータスメンの気質であろうか、その後のロータスにもそうした人間が多数在籍してきた気がする。それでも、当時のロータスメンにも様々な考え方があり、60人超いた部員も徐々にその数を減らし、いつしか40人ほどのクラブになっていた。

1969.7.5 中国短期大学フラウェンコールとのジョイントコンサート

大学には嵐が吹き荒れていたが、1969年7月5日に中国短期大学フラウェンコールとのジョイントコンサートを開催した。ロータス史上初の女声合唱団とのジョイントコンサートだった。OBから女声とジョイントするのは軟弱だとか、女性と付き合うなら団体としてではなく、自分個人の実力でやれとかいろいろ非難された。

遡ること、1966年(第6期)にロータスが初めて女子大(ノートルダム清心女子大学グリークラブ)との合同ハイキングが企画されたが、これが先輩から問題視され、総会で討議し、ようやく開催許可が出たことがあった。ロータスが軟弱化したのはお前たちのころからだといまだに、先輩たちから非難されている。

演奏会は成功裏に終わったが、翌年からフラウェンコールは、関西大学グリークラブと、毎年ジョイントコンサートを重ねていった。もちろん、ロータスにはそれ以降さっぱりお声がかからなかった。

そうした理由を考えるに思い当たる原因はただ一つだけだった。演奏会が終わった後の打ち上げでの宴会芸が、フラウェンに引かれまくったようだ。やはり、今も昔もロータスの伝統芸は、男声合唱団相手に披露すべきものなのだ。

※1969年 アポロ11号初の月面着陸、「サザエさん」放送開始

第9回定期演奏会(1970.2.7) 岡山市民会館

人数を減らしながらも年が明けて開催した第9回定期演奏会は、初めて客演指揮者に中国短期大学フラウェンコールの近藤安个先生を迎えて落語による組曲「男は男」を演奏している。近藤先生は、、第8期(1968年)から第13期(1973年)までのヴォイストレーナーを務めていただいただけでなく、この後もロータスの数々の演奏会で指揮をしていただくことになる。

※1970年 大阪万博開催、よど号ハイジャック事件

 

第10回記念定期演奏会(1971.1.30) 岡山市民会館

1971年(昭和46年)1月30日に開催された第10回記念定期演奏会は女優の加藤道子さんをナレーションに招き男声合唱組曲「山に祈る」等を演奏した。第10期正指揮者は、現在の名誉指揮者である上月 明だった。のちの話になるが、上月は1979年(19期)にロータス初の常任指揮者に就任し、その後2014年(54期)まで36年間の長きにわたり常任指揮者としてロータスを指導している。のちに、岡山県合唱連盟理事長、岡山市民合唱団鷲羽指揮者、桃太郎少年合唱団団長を務めている。

第10回記念定期演奏会(1971.1.30) 第4ステージ男声合唱組曲「山に祈る」(指揮 上月 明 ナレーション 加藤道子)(岡山市民会館)

加藤道子さんは、第1回「NHK紅白歌合戦」で紅組司会を務め、3つの連続テレビ小説に出演されている。

 

ロータスは、大学紛争の嵐の中で人数を減らしながらも毎年冬の定期演奏会を開催することができた。ロータスはこの嵐を乗り越えることができたかに見えたが、大学紛争の嵐は当時の部員の減少だけにとどまらなかった。大学紛争が終わっても部員減少の影響は翌年以降にも波及し、その後の低迷期を迎えることになる。本当の試練はこれから始まるのだ。

※1971年 マクドナルド日本第1号店、「カップヌードル」発売

 

第5回「試練」に続く

ロータス物語 第5回「試練」
(前回のあらすじ)ロータスは、大学紛争の嵐の中で人数を減らしながらも毎年冬の定期演奏会を開催することができた。ロータスはこの嵐を乗り越えることができたかに見えたのだが・・・ 14期浜田、16期井上、16期武藤の文章をまとめた物語です。 歌を...
ロータス物語 ~ロータス60年+αのあゆみ~
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